アメリカの大学院留学で、学業以外で1番大きな課題とも言えるのが授業料の工面。
今日は、キャンパス内のオフィスや教授の助手として働くことで授業料免除+お給料がもらえる制度、Graduate Assitantshipsについて紹介し、文系修士の私がどのようにそのポジションを獲得したかについてお話したいと思います。
留学生には高すぎる!アメリカ大学の学費
アメリカの大学はとにかく学費が高いことで有名です。
In-state students (州内在住の学生)、Out-of-state students(州外からの学生)、International students (留学生)と3種類に分かれており、州内在住の学生の学費が1番安くなっています。
例えば、私が通っていた大学は、アメリカの中でも比較的学費は安いほうだと言われていましたが、1年間の学費のだいたいの見積もりはこんな感じ。
(※学費のみの見積もりで、教科書代、保険代、ハウジングなどは含まれていません。)
(※一般学生の学費見積もりですが、理系の学部によって倍以上になるところもあります。)
【Undergraduate students (学部生)】
In-state: $12,700(30単位)
Out-of-state: $28,220(30単位)
International: $28,220(30単位)
【Graduate students (大学院生)】
In-state: $6,820(16単位)
Out-of-state: $17,150(16単位)
International: $18,903(18単位)
これに教科書代、家賃、食費、施設使用料、保険料などを見積もると、大学院の留学生の1年間の総額は $37,533と見積もられています。※あくまでも私の母校の見積もりです。
もう一度言いますが、これでも全米の中でも安いほうだと言われている州立大学です。
州内、州外、国内でこんなに違うとは・・・。納めている税金の関係でしょうが、留学生にとってはあまりにも高すぎますよね。語学や能力よりも、費用の面で諦めてしまう方も少なくないのではないでしょうか。
Graduate Assitantships (アシスタントシップ制度)とは
Graduate Assistantships (大学院生助手制度)とは、アメリカの大学院特有で、学生をしながら授業を受け持ったり特定の教授の研究のサポートなどを担うことで、授業料が大幅に免除され、さらに月々の給料ももらえる、という画期的な制度です。
アシスタントシップには様々なポジションがあり、職種や所属によって免除額や給料も異なります。
TA (Teaching Assistant)
教授の代わりに授業を受け持ったり、学生のアドバイザーやテスト監督をしたり、提出物や宿題の採点・チェックをするなど、その学部の授業に関する様々な庶務的な役割を果たします。
RA(Research Assistant)
基本的に特定の教授につき、研究のサポートをします。TAのように授業を受け持つこともありますが、一緒に学会に出かけたり自分自身の専門に精通する研究の助手をすることで、自分の実績に繋がることもあります。RAは理系の学生のほうに多くポジションが開かれています。
GA(Graduate Assistant)
いわゆる専門性とともわない一般職です。教えたり研究したりするのではなく、学内の様々なオフィスで普通の勤務者として働きます。
文系の私がどのようにアシスタントシップを獲得したか
文系留学生にとって大事なのは「コネクション」
基本的にアシスタントシップは、自分が希望する学部や教授、オフィスにホームページから申込書を送付したり、直接連絡をとったりして申し込みます。しかし、希望する学生が多いため競争率がかなり激しく、なかなか採用されないのが現状です。とくに文系の留学生にはRAの機会はかなり少なく、TAも言語の問題があったりして適用されにくいという現状があります。
そこで、私が留学生に強く勧めたいのが、人とのコネクションを作ることです。アルバイトでも学生会でもボランティアでも何でも良いので何かに所属する。また、自分の学部や履修している授業の教授との関係性を深め、自分という人間を知ってもらい、信頼を得ること。これが大事だと思います。
私がGAのポジションを得たきっかけは、アルバイトと留学生学生会で他のGAや顧問のスタッフと関係性を深めたことがきっかけでした。
まずはアルバイトと学生会から始めた
私は最初のセメスターは寮に住んでいました。ひょんなことから寮長に呼び出され、自分の階のキッチンのハウスキーパーとして働いてくれと頼まれ、寮内で掃除のバイトをはじめました。
(アメリカ人50%、留学生50%のとても国際色豊かなフロアだったのですが、共同のキッチンがありえないくらい汚なかったので、普段から有志で掃除をしていました。それが寮長の目に止まったようです。)
正規留学生は学内であればアルバイトが許されています。しかし、留学生が働くためには何かと手続きが必要です。そこで、留学生の各種手続きを担当するオフィス、Office of International Students and Scholars(以下ISSオフィス)にちょくちょく通うことになりました。
同時に、そのオフィスが管轄していた、大学の全留学生3500人をまとめる留学生学生会の執行役員に立候補し採用され、担当者との打ち合わせや会議などでさらに頻繁にISSオフィスに通うことになりました。
そこでオフィスのチーフや他のスタッフ達と仲良くなり、次はそのオフィスでウェブサイト管理をしてもらえないかと頼まれ、ハウスキーピングの仕事を友達に引き継ぎ、ISSオフィスでウェブサイト管理者としてアルバイトで働くことになったのです。
突然訪れたチャンス
ISSオフィスでアルバイトを初めてから数ヶ月後、同僚だったアメリカ人GAが卒業することになりました。またGAの募集をかけるのかな?と思っていたところ、オフィスのチーフで留学生学生会の顧問でもあった上司に呼ばれました。
これからはGAとして彼女の仕事を引き継いでいくれ
ウェブサイト管理者も継続しながらだったので仕事は倍増したのですが、晴れてアルバイトからいきなりGAに昇格。自然の流れの中でアシスタントシップをゲットしました。
私はアルバイトとして働きながら、上司をはじめ全ての同僚とのコミュニケーションを意識していました。自分でできることは最後までやりきる。わからないことは勝手に進めないで正直に助けを求める。何気ない日常会話を大切に、みんなに声をかける。とにかく、自分の仕事の姿勢を大事にしつつ、周りの同僚たちやウェブサイトを訪れる人たちに少しでも喜んでもらいたい、という思いで仕事をしていました。これが私の働くポリシーでした。
また、学生会の自分の担当する役職も、研究の合間ではありましたが、上司や他のスタッフにサポートしてもらいながら率先してこなしていたと思います。
それを上司が見ていてくれたのかどうかはわかりません。しかし、入学願書担当というかなり重要なポジションに、留学生の私をGAとしてつけてくれたのです。まさに青天の霹靂でしたが、心から嬉しかったです。
私のGAとしての職種
私の肩書きは、Website Manager (ウェブサイト管理者)兼Addimission Coordinator (入学手続きコーディネーター)でした。後者では主に学部生の入学願書受付を担当していました。入学願書や付随資料(高校の卒業証明書、成績証明書、TOEFLスコア、SATスコア、エッセイ、推薦状など)が全て最初に私のところに届くので、支給番号(後に学籍番号になる)をつけてシステムに入力し、合否判定担当者に上げる、という役割です。
それに加え、入学に関する様々な問い合わせが毎日のように世界中から届くので、電話対応をしたり、大量のメールに返信したり、さらにはオフィスに直接相談にくる学生の相談役も勤めました。
上司や同僚にも恵まれてたとても良い環境で、何より仕事がとても充実していました。同じ留学生として志願者の気持ちがわかる分、少しでもわかりやすいように、安心させてあげられるように、と真摯に対応しました。やりがいのある仕事で、充実していて良い経験にもなったし、この経験を通して自分のコミュニケーション能力も格段に上がったと思っています。また、オフィスを訪れる様々な人たちに私を知ってもらうことになり、キャンパス内でもよくいろいろな人に声をかけられるようになりました。
待遇は?授業料免除と給料
上記で述べた通り、アシスタントシップの待遇は大学や地域によっても様々で、さらに同じ大学内でも働く場所によってかなり異なります。
私のポジションの待遇は、正直に言って「良い」とは言えませんでした。まず、月々の給料は$1,200。これはとても安いです。他のどのポジションを見ても、だいたい$1,500〜$2,000はもらっていたので、ちょっと残念でした。それでも、生活の大きな助けになったのは言うまでもありません。
次に学費免除ですが、私は1セメスターに9〜12単位登録していたのですが、留学生なのにIn-stateの学費でOKになり、さらに6単位まで授業料免除ということだったので、In-stateの3〜6単位分の学費支払いで済んでいた、ということです。これはかなり大きいです!上記の学費計算でいくと、年間$18,903支払わなければいけないところ、約$2,000でまかなえたことに。
待遇は職場によって様々で、例えば以下のようなオプションがものがありました。
- キャンパス内の駐車料金免除
- ミールプラン付き(セメスター$○○まで)
- 寮費免除(全額or半額)
- 保険代カバー
- 学会へ同行
応募する前に、そのポジションの待遇をしっかり調べることをオススメします。うちの大学に限ってかもしれませんが、待遇の差がかなり激しかったです。
アシスタントシップまとめ:留学生にとって大事なこと
特に文系の留学生にとっては競争率がとても激しいアシスタントシップ。英語力やコミュニケーション力でネイティブにかなわない中、アシスタントシップをもらう上で大事なことは「コネクションを作る」ことです。
私はまずはオフィスで働いていた大学院生達と仲良くなり、よく話をするようになりました。彼らと同じサークルに入って幹部をしたり、そのオフィスにちょくちょく顔を出して話をする中で輪が広がり、他の勤務者やチーフとのコネクションができた中でGAの話を頂きました。
また、気に入った教授がいたら頻繁にオフィスアワーに押しかけて質問をしたり、その教授の専門について話を聞いたりするなどして関係を深めるのも1つです。TAやRAをする上で大事なのは、まず教授に、大量にいる学生の中で自分のことを認識してもらい、好感を持ってもらうことだからです。
アシスタントシップは金銭面で助けになるだけでなく、自分の大きな経験・功績の1つになり、先々の自分の進む道に繋がっていく可能性もあります。大学院志願時にはもらえなかったとしても、セメスターが始まってからいくらでも応募する機会はあります。あきらめずに自ら色々な所に足を運び、アプライしてみてください。必ずどこかにチャンスは眠っています。
Ichiko